引渡命令(ひきわたしめいれい)とは

引渡命令(ひきわたしめいれい)とは

引渡命令(ひきわたしめいれい)とは、競売手続きが終了して代金を納付した買受人に対し物件を引き渡すよう、物件の占有者へ裁判所が下す命令です。競売手続きが終了して買受人が定められた代金を納付すると、所有権登記が書き換えられて物件は買受人の所有物となります。ところが元の居住者などの占有者が物件を引き渡さなければ、買受人は現実に物件の利用を開始できません。そこで裁判所に申立をして引渡命令を出してもらいます。

引渡命令の申立方法は非常に簡単で、通常弁護士に依頼する必要もありません。申立後3~4日で裁判所において「不動産引渡命令」の決定が下り、申立人(買受人)と相手方(占有者)へ決定書が郵送されます。一般的に不動産からの「立ち退き命令」を出してもらうには「訴訟」をしなければなりませんが、引渡命令を出してもらえたら訴訟手続きは不要です。

このように簡易かつ迅速に占有者への引き渡しを命じてもらえるので、引渡命令は競売物件の買受人にとって非常にメリットの大きい制度といえます。引渡命令が出ても占有者が退去しない場合には、買受人は「強制執行」によって強制的に占有者を退去させることが可能です。

引渡命令を申し立てられる期間

引渡命令には期間制限があります。

一般的なケースでは代金納付後6か月間

一般的なケースにおける引渡命令の申立期限は「代金納付から6か月間」です。
代金を納付したら6か月以内に引渡命令の申立てを行わないと簡易な引渡命令が認められなくなり、手間のかかる「訴訟」をしなければ相手を立ち退かせることができなくなります。
競売で物件を落札し、代金を納付したらなるべく早めに引渡命令を申し立てましょう。

抵当権設定後に入居した賃借人がいる場合には9か月間

引渡命令の「代金納付後6か月」の期限には、例外があります。それは「抵当権設定後に賃借人が入居していた場合」です。
賃借権が抵当権設定後に設定された場合、物件が競売にかかったら賃借人は基本的に退去しなければなりません。ただ、この場合には即時退去ではなく「6か月間の明渡猶予期間」が認められます。そこで買受人による引渡命令も「代金納付から6か月間」は申し立てることができません。
抵当権設定後に入居した賃借人がいる場合の引渡命令申立期限は「代金納付後9か月間」となります。よって抵当権設定後の賃借人がいる場合、通常「代金納付後7~9か月」の期間に引き渡し命令を申し立てることとなります。

賃借人が賃料を払わない場合の例外

抵当権設定後の賃借人が買受人による代金納付後に物件の利用を続けるには「賃料の支払」が必要です。物件を利用しているにもかかわらず賃料を支払わない場合には、もはや保護する必要がありません。そこで賃借人が賃料を1か月分以上滞納し、買受人から督促を受けても支払いに応じない場合には、代金納付後6か月が経過していなくても買受人による引渡命令の申立が可能です。

引渡命令の申立方法、手順

引渡命令を申し立てる際には、以下の書類が必要です。

・不動産引渡命令申立書
申立人である買受人が自分で作成します。署名押印する欄がありますが、印鑑は入札に使用したものと同じものを使いましょう。
物件目録(物件の明細を記載した書面)や当事者目録(申立人、相手方などの当事者情報を記載した書面)もつける必要があります。

・法人の資格証明書
相手(占有者)が法人の場合には、資格証明書の添付が必要です。

・内容証明郵便、配達証明書
相手が抵当権設定後の賃借人で、賃料を払わないために6か月経過前に引渡命令を申し立てるときには、賃料支払いを請求した事実を証明するための内容証明郵便や配達証明書が必要です。

費用について

申立手数料は、相手方1名について収入印紙500円です。相手方の人数が増えると1人について500円が加算されます。
また連絡用の郵便切手が必要です。

引渡命令を申し立てて裁判所で決定があると、相手方に引渡命令の決定書が送達されます。
これによって相手が任意に退去しない場合には、裁判所の「執行官」に「明け渡しの強制執行」を申し立てて強制的に退去させます。

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